【離婚するとき親権はどうなるの?】親権を決めるポイントと勝ち取るコツ

日本では離婚の親権は、「子供は母親が育てるもの」という考えから、現在でも実際に80%以上の10歳くらいの子どもたちが、離婚後母親と一緒に暮らしています。しかし、この傾向も経済状況や子育ての考え方の変化により近年変わりつつあります。

親権の決定は夫婦のどちらが親権者になることが子どもにとって良いのか、また、子ども環境が整っているのかなど将来にわたって子どもが幸せな生活をし続けることが親権を勝ち取る大前提となっています。近年では子どもの数が少なくなったため自分で育てたいと親権を求める男性も増えています。そのため以前よりも、母親ではなく父親が親権を取る場合も出てきています。ここでは、一般的な親権を勝ち取るための知識と男性でも親権を勝ち取りやすくするコツについてご紹介していきます。

この記事でわかること
・離婚する時の親権の決まり方
・親権を左右する5つのポイント
・親権を勝ち取るためのコツ

読むのに必要な時間は約 8 分です。

1.離婚するとき親権はどうなるの?

未成年の子どもがいる場合、親権者が決まらないと離婚届けが受理されないと離婚をすることができません。未成年の子どもがいる状態で離婚する時は、事前に夫婦でどちらが子どもの親権を持つかを話し合い、離婚届に子ども一人一人について親権者を記載することが必要となります。親権について夫婦で話し合っても合意ができない場合は、家庭裁判所に申し立てをして離婚調停をすることになります。

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■親権とは?

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離婚後の親権の権利は2つあります。1つ目は、「未成年の子どもの世話や教育をする権利(身上監護権)」、2つ目は「子どもの財産を管理する権利(財産管理権)」です。

親権は、必ず両親の“どちらか”が親権を持つことになります。両親両方とも親権を持つ、または、どちらも親権を持たないということはありません。子どもが複数いる場合には、それぞれの子どもについて一人一人親権者を決めることになります。

■離婚前に決める必要がある

離婚届に未成年の子どもの親権者を明記する欄がありますので、離婚前に親権は決めておきましょう。親権を決める時は、早く離婚がしたいからと一時的な感情で話し合うのではなく、子どもの将来を考えて、どちらが子どもの親権者になることが子どもの未来にとっていいのかを考えて離婚前に親権を決めることが大切です。一度、親権が決まってしまうと親権者を変更するには家庭裁判所の許可が必要になりますので、しっかりと子どもの将来を考えて決めると良いでしょう。

また、その他離婚前に決める必要がある内容としては、養育費、面会交流、婚姻費用、財産分与、年金分割、慰謝料の6つのポイントについても、しっかりと話し合いをしておくとよいでしょう。どの内容も離婚後の子どもとの生活に関わる大事な内容です。離婚前に親権以外の内容もしっかり決めるとよいでしょう。

■親権を決めるには?

親権を決める場合、離婚前に夫婦間で話し合い(協議)をし、親権者を決めます。親権者が協議で決まらない場合は、家庭裁判所に申し立てをして家庭裁判所の調停で争うことになります。その場合、調停の申し立てに必要な書類と調停で争う場合の親権が決定するまでの流れは以下の通りです。

【調停の申し立てに必要な書類】

・夫婦関係調整調停申立書

・申立人の印鑑

・申立人の戸籍謄本

・相手方の戸籍謄本

【親権が決定するまでの流れ】

①親権を争う相手の住所を管轄する家庭裁判所に調停の申し立てをする

②離婚調停日の決定

③第一回および以降の離婚調停[/btn]

④離婚調停の終了

調停は1カ月に1回程度の頻度で行われ、その多くが3回程度で終了します。おおよそ3カ月を見ておけば調停は終了しますが、あくまでも目安ですので、1回で終わることもあれば話がまとまらなければ、なかなか終わらない場合もあります。

また、調停が開かれると調停期間中に家庭裁判所から調査官が派遣され、普段の家庭の様子を確認・チェックされます。家庭裁判所の調査官は、親権獲得において非常に影響力を持っているので、調査官が調査する内容をしっかりと把握し理解を深めておくとよいでしょう。

2.親権を決めるポイント5つ

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親権が決まる傾向としては、子どもが小さければ小さいほど、母親と暮らす方が生活環境の変化が少なくなり子どもの負担が軽くなるため母親と暮らす方が適していると判断されやすい傾向にあります。ここでは、子どもの年齢以外の親権を決める5つのポイントである離婚後の住居、生活環境、愛情、意欲や能力、生活態度について詳しく見ていきます。

 

■離婚後子どもはどんな家に住むか?

離婚後、これまで住んできた環境を維持できるのか。また維持ができない場合は離婚後の居住環境がどうなるかがポイントとなります。また、子どもと同居が可能かどうかもポイントとなります。

そのような居住環境について大きく分けて3つのケースがあります。

1つ目は、住んでいた家に住むケースです。この場合、離婚による転居・転校がないので子どもの精神的な負担が軽くなります。そのため、同居する親と子どもとの親子関係が良ければ、同居する親が親権を持つ方が良いと判断されるやすい傾向があります。

2つ目のケースは、賃貸住宅を借りて働きに出るケースです。この場合、十分な経済力がないと以前の生活費だけではなく家賃も発生するため以前と同じような生活をするのは非常に厳しくなり、子どもが複数いる場合はなおさら厳しくなります。社会的には、女性が子どもを育てた方が子どもは幸せと言われていますが、経済的に厳しい状況では、現実問題として親が子どもに愛情を注げる時間が少なくなるため、親の役割をどこまで果たせるかが親権を獲得するポイントとなります。

3つ目のケースは、離婚後に実家に帰るというケースです。離婚した女性が、子どもを連れて実家に帰るケースはよく見られます。実家であれば、家賃の心配がないため経済的な余裕が出るだけでなく、困ったときは実家の親の助けがあります。経済的な面だけではなく、母親以外に子どもの面倒を見る大人がいるということは、子育てをする上で子どもに安心感やさみしさを埋めてくれる可能性があり、親権獲得のポイントとなります。

■離婚後子どもはどんな家庭環境に身を置くか?

子どもの親権を争っている場合、調停中に「家庭裁判所調査官」による調査があります。調査の内容としては、家庭訪問や子どもとの面談だけでなく、学校や保育所などを訪ね、家庭以外の場所での普段の親子の様子や生活環境がどのような状況になっているのかをチェックされるようです。そのため、調査の内容は離婚後の親権者を選ぶ際の重要なポイントとなることが多いようです。

調査のポイントとしては、「あなたが親権者になるのが適当かどうかとその理由」、「現在までの子どもを養育した環境について」、「場所なども含めた今後の養育方針について」、「相手の親が親権者となるのが不適当かどうかとその理由」などです。

具体的には、夫婦のどちらが主に子どもの世話をしてきたのか、また、子どもが低年齢である場合は、子どもと過ごせる時間が多いだけでなく、離婚後に親権者自身の家族や保育所等ではない手厚く面倒を見てくれる人などの存在の有無も考慮される傾向にあります。子どもが離婚後に非行に走る危険性を減らすためにも、また犯罪の危険から守り子どもにとって健全な育成をするためにも家庭環境を整えるとよいでしょう。

■親は子どもに愛情を注いでいるのか?

経済的に安定して余裕があっても、忙しすぎて子どもに愛情を注ぐ時間がなければ意味がありません。愛情という面での判断は、周りに協力者がいるということよりも、親権者自身が離婚後に子どもと過ごす時間を持てるかがポイントであり、子どもとの過ごす時間が多く持てる者の方が子どもへの愛情が大きいと感じられ、親権者に適していると判断されやすい傾向にあります。愛情を計る基準としては、子どもと過ごしている時間が長いほうが優位になる傾向にあります。

■親に子どもの面倒を見る意欲や能力があるか?

身体が健康でなければ離婚後に子どもと健康的かつ健全な生活はできません。そのため、肉体的にも精神的にも安定した状態が親には求められます。子どもが健康でいるために栄養バランスの良い食事の準備、衛生面を保つために洗濯などの身の回りの世話をする家事能力も親権を獲得する重要なポイントとなっています。

子どもを育てるには身の回りの世話をする家事能力だけでなく、お金もかかります。そのため経済力も重要な判断基準となります。しかし、収入の大きさが親権の獲得に大きな影響を与えるということはなく、生活に必要な最低レベルの収入がある場合は養育費として相手方に養育費をもらい生活を成り立たせることもできます。生活に必要な最低レベルの経済力がない場合は、安定した経済力をつけておくと良いでしょう。また、普段から病気がちであったり、精神疾患を患っている場合は、子どもの養育能力に欠けると判断されることもありますので注意しましょう。

■親の生活態度はどうなのか?

親がどんな生活態度で送っているかも親権者をきめる上で重要なポイントとなります。片親で子供を育てるということは、両親が協力して行う子育てを一人ですることです。離婚後、一人で育てるということは、夫婦が同居して子育てしていた時よりも親権者の負担は大きくなります。

その結果、離婚前とは違い趣味や友達付き合いを減らさざるをえない場合もあります。子どもと過ごす時間が取れない仕事をしている場合は、転職も考慮に入れざるをえないこともあります。

子どもを養うために仕事をするだけでなく、子どもとの時間が長く確保しているかが親権者に選ばれるポイントとなっているようです。子どものためにライフスタイルを変える転職を考えているのであれば、アピールポイントとして伝えると良いでしょう。

3.親権を勝ち取るためのコツ

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親権を勝ち取るための様々な条件を述べてきましたが、条件を完全に満たすことは難しいものです。それでも親権が欲しいとなった場合に話を有利に進めるためのコツとしては、4つあります。

①調停委員を味方になってもらえるように、子どもに対する愛情や今まで育ってきた内容を客観的に主張すること。

②家庭裁判所の調査の際に、子どもと過ごせる時間を長く確保しているか、また子供に対して多くの愛情を注いでいるかが客観的にわかる証拠をアピールすること。

③子ども優先のライフスタイルにして、親権者としてふさわしいことをアピールする。

④弁護士が親の代わりに今後の生活がどのように変化するか理解できるようにサポートすることで、子どもの本心を把握しつつ客観的にどちらの親と生活することが子どもにとって一番良いのかを親や裁判官に提言してもらうなどです。

②の調査官に対する対応ですが、相手はプロです。付け焼刃のテクニックで有利にすることはできません。そのようなことをするよりも、しっかりと社会常識ある態度を取りましょう。礼儀正しく協力する、遅刻をしない、部屋を片付けておくなどは常識ある大人として親として当然のことです。また、有利な事実は客観的にしっかりと説明し、否定できないような都合の悪い事実は、しっかりと説明できるようにしておくと良いでしょう。

子どもとどのように関わってきたのかを説明する際は、“普通”に接してきた行動の内容を調査官が理解しやすいように具体的、客観的に説明できるようにしておく必要があります。また、タイムテーブルなどを作り、適正な養育ができているか客観的にチェックをして問題があれば改善しておくと良いでしょう。

④は、子どもの本心を探るため、自分にとってあまり喜ばしい結果にならない可能性もありますが、子どものために愛情を持った態度をとることで、裁判官へのアピールとなる可能性もあります。

■配偶者を否定しないこと

親権のゴールは、親権の獲得ではなく子どもの幸せです。最終的に子どもの幸せな姿を見ることができるかです。

子どもにとっては父・母はともに大切な両親です。親に暴力をふるわれたなどの一部の事情を除き、配偶者としてはうまく生活できないとしても子どもの幸せのためにお互いに子どもの父・母として尊敬できるところを見つけ、今後は夫婦としてではなく親として子どものために協力しあえる関係を築くことも大切です。そのことを理解してもらえるような話し方、伝え方を相手に心がけると良いでしょう。

また、離婚後に自分の致し方ない事情で離婚相手の協力が必要になることもあります。離婚して子どもを引き取ったとしても、相手が子どもを見てくれたり、相手のご両親がみてくれたりできるような信頼関係があれば子育てを協力してもらう可能性も広がるため余裕をもって子育てをできるようになるでしょう。

それにより子どももたくさんの大人に愛されていることを実感することができるようになるので、相手を否定せずお互いに協力しあえる関係を維持するように努力すると良いでしょう。

■子どもを味方につけようとしない

親に暴力をふるわれたという一部の事情を除いて、子どもにとって父親も母親も大切な存在です。どんな夫婦間に問題があったとしても両方に愛されたいと思っています。子どもの気持ちとしては、できれば両親と仲良く暮らしたいけれど、親の理由で片方の親と一緒に暮らせなくなってしまうのです。

そんな風に思っている子どもに対し、自分の味方につけるためにする行動は、父親も母親のどちらも選べない子供にとって心を痛める行為になるので避けましょう。離婚調停では、調査官が様々な心理テストを使って子どもの気持ちも調査しています。親がどちらと住むのがいいかを親が判断するのではなく、子どもの意志を積極的に確認すると良いでしょう。

確認をする時は、今後自分と生活すると生活がどのように変わり、相手と生活するとどのように生活が変わるのかなど、できるだけ子ども自身がイメージできるように言葉を選び、客観的にどちらと暮らした方が自分にとっていいのかを判断できるように話すとよいでしょう。

4.母親の方が親権を勝ち取りやすいが……

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裁判所の傾向を見ると、圧倒的に母親有利(全体の80%~90%)となっています。これは、子どもの意見が尊重されるのは10歳前後からということも要因の一つとなっています。

子どもが低年齢であればあるほど、子どもには母親が必要であるとの考え方が社会的に浸透しており、母親が抵抗をした場合には、父親は不利であるという状況が見られます。しかし、近年では、子どもを養育する環境が整っていれば、裁判所が「父親でも面倒をみることができる」と判断を下される事例もでてきているようです。

子どもの年齢が10歳以上である場合は、子どもの意志も必要に応じて親権者を選ぶ際の判断要素となります。15歳以上である場合は、基本的に本人の意志が尊重されます。

■母親が親権を勝ち取りやすい理由

母親が親権を勝ち取りやすい理由としては、社会的に子どもの年齢が低ければ低いほどその成長には母親が必要との考えがあります。なぜそのように言われるかというと、問題なく生活ができている子どもの生活環境を変えること、つまり同居している親や多くの時間を接している親と引き離すことは、子どもを不安定にする可能性が高いからです。

そのようなリスクを考えると、幼い子どもの場合、一般的に接する時間が長い母親の方が生活環境の変化が少なく適切に育てることができる判断されるようです。そのため、8割の幼少期の子どもたちは母親が親権者となるのが一般的になっています。

しかし、子どもの幸せを判断するポイントに過ぎず、この理由だけで必ずしも親権が決まるわけではありません。近年では「イクメン」といわれるように夫も育児に参加し、積極的に愛情を注ぎ父親が親権をとる例もでてきているようです。

親権を勝ち取るには?

父親が親権を勝ち取るには、しっかりと親権をもつのに適しているということを客観的に示せるように証拠を集めて立証していくことが重要となります。もし妻に親権を持つのに適しない証拠があるのであれば、有利に親権を獲得できる可能性もありますので、客観的に証明できる証拠を集めておくと良いでしょう。

別居した場合には、子どもの身の回りの環境を整えてすぐに引きっとって一緒に生活するなど「父親が子どもの世話をする方が子どもの将来にとって良い」と判断してもらえるように環境を整えるとよいでしょう。子どもと一緒に暮らしているという事実が親権を勝ち取るための有利な材料となります。

5.まとめ

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親権は、親に与えられた権利ではありますが、あくまでも子どもの未来の幸せのために設けられた制度です。調停や裁判になった場合でも、子どもの幸せを第一に考え離婚後も親として協力しあえる関係を築くようにするとよいでしょう。

親権を獲得する際に最も重要視されるのは、離婚後の生活環境や愛情を注ぐ時間の確保などが親権を獲得する重要なポイントです。日本では、生活環境の面から母親が有利な状況ではありますが、子どもが幸せになれる要素があれば父親でも親権を手にすることができる可能性があります。

親権を主張する際には、子どもが幸せになるための行動を客観的な証拠として常日頃から把握してまとめておくと良いでしょう。